What-if

もし、個人の医療データや行動データを売買して、収益化できるようになったら?

事実はどこに

先日、ママ友の佐々木さんが昇進した。
彼女は私と同じ会社で働いていて、日頃の子育ての悩みをお互いに共有できるありがたい存在だ。
あの忙しさで昇進できるなんて、一体彼女はいつ仕事の時間をとっていたのだろうか。
まさか‥‥‥
今の時代個人データが自由に売り買いできる。もしかしたら佐々木さんは誰かのデータを購入し、自分のものとして提出していたんじゃないだろうか?

私は彼女の人柄を知っている。彼女は面倒見が良く、私の相談も親身になって聞いてくれる姉御肌な人だ。決して偽造データを渡すだなんて卑怯なことはしないはず。
しかし、私は同僚を通じて彼女のデータ取引についての噂をたびたび聞いていたのだ。

私の会社ではパルスサーベイを実施しており、4段階評価でシステムに入力し社員の状態を把握している。勤務状況もその中に含まれていて、基本的にデータ内容は人事や上司が見ることができる。同僚から聞いた話によると、先月勤怠システムの打刻漏れがあったとき全員の勤務状況が含まれた画面のスクリーンショットが全員に送られ、その時見えた佐々木さんの勤務状況が残業も多く、目を疑ったというのだ。

私と同じような状況で彼女がそれほど仕事に費やせる時間が取れていることがどうも納得いかない。この前聞いた話では家庭のストレスで仕事に集中できないと愚痴をこぼしていたじゃないか。これを根も葉もない妄想だと言い切れるだろうか。私の勤務時間は佐々木さんより少ないかもしれないが、仕事の効率を考えながら成果をあげているのにこの仕打ちはいくらなんでも悔しい。

誰もがデータの出所を確認する術もなく、評価し、そのデータに翻弄されてしまうのだろうか。彼女の勤務時間が異常だとなぜ上司は気づかない?彼女の話を聞けば無茶というか、偽造だとすぐに分かるものじゃないか。これもデータ依存の副作用か。誰もデータを疑おうとしない。もし、このまま何もかもがデータで評価されてしまうのなら、より良いデータを提出することに注力する事態になってしまう。データさえ入手すれば、それが功績になるなんて私は人をどう信じたらいいのか。仕事の目的も友人も失いそうだ。