会社と契約しているデータプロバイダーが中国の大手企業になった。それに伴ってデータが利用される範囲も変わり、毎日、関係各所への説明に追われている。データを提供している社員に対してデータを扱う社員は圧倒的に少なく、ひっきりなしに押し寄せる不安や疑問に対処するために研究でデータを集めていた自分まで駆り出される始末だ。おかげで想定外の仕事が増えて、今まで通りの生活では体力が戻らなくなってしまった。自分が提供しているデータもすっかり悪化した。
十分な休息が取れないままデータが低迷し続けて半月ほど経った時に面談の打診がきた。過去の求職者や退職者のデータと類似した点があるとカウンセリングを受けさせるシステムがあるのだ。呑気に面談を受けているうちに仕事はどんどんたまるし、そもそもデータについての説明のせいで自分のデータが低迷している。上司にも報告が行く面談でそんなこと言えるはずもない。今は猫の手も借りたい状況なのだ。
もう一つ困ったことがある。研究用に集めていたデータも利用範囲が変わってしまったため一度説明をし直さなければならない。しかし、個人情報と紐づけていなかったために提供者の特定ができなかった。この研究は会社の利益に関わるのでやらねばならないが、本人に満足な説明がでいないままデータを利用していいのだろうか。こんな気持ちで自分はこれからやっていけるのだろうか。