2030年のデータ倫理法の施行で、企業は授業員の行動データなどの運用に多大なコストを払うことになったが、一方そのデータの活用については「倫理的」という枠がはめられたために思うに任せず苦しんでいた。
苦しんでいたのは企業だけではない。ここでは1組のカップルが危機を迎えていた。
大津 もうやってられない! 業績は下がってるし、私の評価も前よりいい加減だし。あいつらはデータ経営するつもりがないのよ。
田澤 そんなことないよ。ルールの中で彼らだって頑張ってるんでしょ?
大津 私はちゃんとデータを出してるのに、出してない奴らと差を付けないから、ちっとも評価が上がらないじゃない。
田澤 いや、でもデータを出さない従業員を不当に差別しないっているルールだし…
大津 大体あんな法律ができたのがいけないのよ。あれ以来、日本のデータ活用は進まないどころか退歩しちゃったじゃない。
田澤 そうかも知れないけど、だからって香港に移住とか言い出さなくても。
大津 私はね、沈んでいく国の沈んでいく企業なんかと心中するつもりはサラサラないのよ。
田澤 でも、おれ日本史の先生だからついて行けないよ…
大津 あなたは難しいかも知れないけど、私はSEだし実力あるし、どこでもやって行けるのよ!
田澤 それって、もう別れるってこと…?