What-if

もし、サーベイなどに正直な回答をしない、正確なデータを提供しない行為が、「公文書偽造」として罪に問われるようになったら?

上司はつらいよ

従来から導入されていたパルスサーベイの真正性に疑問をもった海野社長は、法律の改正にともない経営コンサルタントから推奨されたAIによる虚偽入力発見ツールの導入を決断し、虚偽が発覚した場合には罰則を与える(減俸、勤務評価を下げる)との通知を全社にアナウンスした。
部長の高本氏には、20人の部員があり、部長として部下のパルスサーベリの入力内容の真正性を定期的にチェックすることが要求されるようになった。研修では、部下の虚偽入力を見抜くやり方を受講し、またAIツールにより内容の矛盾を検出する機能が追加されてアラートのでた部下を個別面談・指導することが求められるようになった。
部下の小川さんは、前に導入されたパルスサーベイでは、本心とはことなる内容を入力して、上司に目を向けてほしい時にはわざと「雨」や「曇」を入力することがよくあった。今回の通達により、不安もあったが、以前、高本部長との宴席で、「私は吸い上げるだけで内容など見ない」との話があったため、従来通りお化粧をした入力を続けていた。

ある日、高本部長のモニタに小川さんに虚偽入力の可能性があるとのアラートがあがり、人事部からの通達により、高本部長は小川さんと個人面談をして報告書を提出することが求められた。高本部長は小川さんと面談の場を持ち、今後はお化粧しないことの指導を行い、報告書の提出を行った。 その後、小川さんには、入力時に、虚偽入力のアラートが頻繁にでるようになった。不安をもった小川さんは労働組合に相談したところ、おなじようなクレームがたくさん上がっていることを知った。同じような経験をしている組合員と話し合いの場をもつことで、上司と会社に対する不信感が高まっていった。

一部メンバーが労働基準管理局に組織によるパワハラとの訴え起こすことになった。高本部長は、こうした動きを人事部門から聞き、小川さんら現場社員との面談を何度となく行うことになった。社員からは会社は俺たちを信頼していないのか、個別指導はパワハラだとの声があがり、会社からは厳格な指導・対応が求められた。人情派の高本部長は、現場と本社の板挟みとなり、メンタル面での体調を崩していった。