会社がHealth Coreを導入してから3年半が経った。相変わらず私はここで働いているし、スコアも良いままだ。評価に繋がったので待遇も良くなった。
今日は久しぶりの出社だ。在宅で働いている時とは違い、他の社員たちの話し声も聞こえてくる。次の会議がどうだとか、ボーナスがどうだとか。いつもと違う状況を新鮮に感じながらぼんやりと周囲の声を聞いていると気になる会話が耳に入ってきた。
「最近知ったんだけどHealth Coreのデータって社外でも使われてるらしいよ」
その一言が耳に入った途端、それまでのゆるい気分は吹き飛んでしまった。そんなことは事前に言われていただろうか。私はさっきより集中してその会話を聴き始めた。
「そんなこと説明されてたっけ?」
「なんかね、かなり前のアップデートの時に規約更新があったみたい」
そういえば半年ほど前に同意を求めるボタンを押したような気がする。あの時に私は規約を確認しなかった。どうせ社内で使うデータだし、今までメリットしかなかったのだから何も変わらないだろうと思ったのだ。だが社外で使われているとなると少し心持ちは違ってくる。誰に何のデータがどこまで渡っているかわからない。今までは人事や上司に見せるためにデータを出していたし、良いデータを出すコツも掴んでいた。会社を疑う訳ではないが、自分のデータが勝手に商品になっているのはなんだか不快だった。デメリットを感じると今までのやる気がすぅっと冷えていく。これから私はこのシステムにどうやって向き合えば良いのだろうか。