#ハラスメント

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私のデータジョークがハラスメントなわけがない

 「田中君、まだまだ若いのに血圧高めなの怖いよ〜笑 今日はもうこれ以上脂っこいもの食べすぎないでよ」
「あ、でた!前も田中君言われてなかった?笑」
「耳タコですよ高本さん笑 いつも俺にだけ手厳しいんだから」
 繁忙期を抜け、開くことのできた担当フロアの飲み会。42歳にもなると部下も以前より増えたが、長い間部下である田中君には血圧の心配をするネタが鉄板となっている。
思えば部下のデータをチェックするようになった当初は、これで部下の状態や事情をいち早く察知しなきゃ、でもその分ハラスメントには気をつけよう、と肩肘を張っていた。
同意さえあればあらゆる生活面でデータが利用される昨今、今や相手のプライバシーな情報を持っている上での話は当たり前。この前もお互いの健康診断のデータを勘違いしていたすれ違いネタがM-1で話題になってたっけ。

 女子大の同級生である友人は、40の時に「日本はこのままだとデータ利活用の後進国になる、未来が見えない」と言って一念発起しアメリカに移住した。そんな理由で40から慣れない環境に?と心配していたけれど、どうやら現在は企業で働きながら、海外のデータ利活用最新事情について発信するインフルエンサーになりSNSのフォロワー数も鰻登りのようだ。
帰りがけにその事をふと思い出しSNSを見ると、「日本はハラスメントの線引きがおかしい事に気づけていますか?個人情報を含むデータ利活用について制限を設けるべきと主張する人がいる一方で、プライバシーに踏み込むのは悪いことではないという風潮、お笑いのネタにされる始末。最新の海外事情では…」という彼女の投稿が目に入った。
一瞬、今日の発言を思い返してドキッとする。でも日本ではデータジョークはもう大衆的に受け入れられていて、アメリカとは土壌が違うしね。同窓会で久しぶりに会うのが楽しみだったけれど「海外かぶれ」の今の彼女とはもう話が合わないかもしれないな…。

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上司はつらいよ

従来から導入されていたパルスサーベイの真正性に疑問をもった海野社長は、法律の改正にともない経営コンサルタントから推奨されたAIによる虚偽入力発見ツールの導入を決断し、虚偽が発覚した場合には罰則を与える(減俸、勤務評価を下げる)との通知を全社にアナウンスした。
部長の高本氏には、20人の部員があり、部長として部下のパルスサーベリの入力内容の真正性を定期的にチェックすることが要求されるようになった。研修では、部下の虚偽入力を見抜くやり方を受講し、またAIツールにより内容の矛盾を検出する機能が追加されてアラートのでた部下を個別面談・指導することが求められるようになった。
部下の小川さんは、前に導入されたパルスサーベイでは、本心とはことなる内容を入力して、上司に目を向けてほしい時にはわざと「雨」や「曇」を入力することがよくあった。今回の通達により、不安もあったが、以前、高本部長との宴席で、「私は吸い上げるだけで内容など見ない」との話があったため、従来通りお化粧をした入力を続けていた。

ある日、高本部長のモニタに小川さんに虚偽入力の可能性があるとのアラートがあがり、人事部からの通達により、高本部長は小川さんと個人面談をして報告書を提出することが求められた。高本部長は小川さんと面談の場を持ち、今後はお化粧しないことの指導を行い、報告書の提出を行った。 その後、小川さんには、入力時に、虚偽入力のアラートが頻繁にでるようになった。不安をもった小川さんは労働組合に相談したところ、おなじようなクレームがたくさん上がっていることを知った。同じような経験をしている組合員と話し合いの場をもつことで、上司と会社に対する不信感が高まっていった。

一部メンバーが労働基準管理局に組織によるパワハラとの訴え起こすことになった。高本部長は、こうした動きを人事部門から聞き、小川さんら現場社員との面談を何度となく行うことになった。社員からは会社は俺たちを信頼していないのか、個別指導はパワハラだとの声があがり、会社からは厳格な指導・対応が求められた。人情派の高本部長は、現場と本社の板挟みとなり、メンタル面での体調を崩していった。

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