What-if

健康情報として、社員の体重や体調の他、DNA・脳波・発話内容・瞳孔の動き、余命など、より機密性の高い情報を、会社が扱うようになったら?

悟りを開く人々

2030年に日本の貧困層2000万人を主な対象として施行された「データを対価とするベーシックインカム法」、通称デベ法は一定の成果を上げ、社会保障費の大幅な削減、データを活用した様々なビジネスの興隆により、日本は再び成長局面に入ろうとしていた。
もう2年以上デベ民をしている戸田さんは、最近AIによる低評価を食らってデベ民となったパートナーの小川さんを慰めていた。

戸田  元気だせよ。ゆっくり英気を養って出直せばいいじゃん。好景気なんだし。

小川  そんなこと言って、あんたはもう2年もデバ民じゃない。危機感が足りないのよ。

戸田  危機感て…、別に税金を無駄に使う立場になった訳じゃないんだし。むしろ、色んな企業のサービスのトライアルユーザとしてデータを提供できるんだからさ。我々が産業を支えてるんだぜ。

小川  私はね、何かを生み出したいのよ。あてがわれるものを消費するだけなのは嫌なの!そもそも、みんながデベ民になっちゃったら、国がつぶれちゃうじゃない。

戸田  人間は生きているだけで価値があるんだって誰かが言ってたよ。おれだって、おれが居なかったら生み出せないデータを生み出せてるんだよ。

小川  データの生成が価値ってどういう人生よ。AIに奉仕してるだけじゃない。

戸田  いや、AIを通してみんなに貢献してるってことなんじゃないかな。そして、その貢献をしたおれににみんなが返してくれてるっていう...

小川  訳が分からないわ!そんな、へびが自分の尻尾を食べるような話が続く筈がないじゃない。