矢島 康二

ホワイトカラーは無関係

千葉県在住の53歳男性。大手システム開発企業の営業職。コロナ以降、仕事場は自宅かお客様先かの2択。通勤に往復3時間かけていため楽になった。現場SEとチームを組んでお客様へシステムの提案やネット環境の保守を行う。課長クラス。

利用しているデータと活用の方法

就業時間は業務管理システムのログイン・ログオフを利用。人事部から社用スマホのGPSをオンにするよう通達があった。工数管理は業務管理システムで自己申告している。見積もり・営業活動(新規顧客)・営業活動(既存顧客)・移動・営業準備活動などの項目から入力する。 在宅勤務が始まったばかりの頃、定期的にPCのカメラで上司が顔を確認する、ということが行われた。クリアな映像なので、プライバシーの問題となり、カメラにぼかしシールを貼ることになったが、結局管理者側が大変なので廃止された。

データ利活用にまつわる体験や考え

実績はデータで示せても、プロセスをGPSやPC履歴データで示すことは現段階では難しい:     「営業は実績で示せる部分もあるけど、GPSの位置情報から、喫茶店=仕事していない、と思われるのが悲しい。外回りで喫茶店での『間接業務』が多いのは、次の客先の準備をする時間。営業のための予備知識を入れるなど。休憩ではない」

居場所や移動のデータ、生体データなどで就業時間や生産性の管理をされる人たちは「レベルの低い人たち」で、自分には起こり得ない:            「(Amazonの倉庫作業者の生産性がセンシングデータで示され、大量レイオフされた事について)失礼な言い方なんだけども、ピックアップするだけの能力しかない人たちなんですわ。機械で賄っちゃうところを、わざわざ人件費を使って雇ってあげてるのに、その会社の気持ちがわからない人たち。差別的な用語になってしまうけれど、レベルが低いからこんなことになっちゃうんだよね。ホワイトカラーの人たちにはこんなこと起こらないと思うよ」

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いつのまにかデータハラスメントをしてしまう人たち

 矢島は、流通会社のシステム企画を提案している。商品をピックアップする人たちがより効率的に仕事が回るようにするため、脳波や瞳孔を分析し、一番良いタイミングで人員配置するものだ。

 どんなデータを取られても仕方ないだろう、だってレベルの低い人なのだから。それで生産性はあがるし、彼らだって、その分効率的に働けると嬉しいんじゃないかな。

 システム開発は佳境に。最近ではノーコード開発できるため、企画者の矢島も開発に駆り出された。慣れない矢島は大きなバグを連発してしまう。見かねた管理者から、脳波を測るよう勧められた。
「君は夜中が活性化しているようだね。この時間に開発するとバグがなくなると思うよ。やってみたら?だって仕方ないよね、レベルが低いのだから。これ以上バグがでたら君だって立場なくなると思うし。」と管理者からアドバイスされた。

 ハッとした矢島は、すぐに会社をやめデータハラスメントの専門知識と心のケア方法を学べる専門学校に通い始めた。

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知らない自分のデータ化

大手システム開発会社の営業職。外回りが多いので就業時間はスマホの勤務管理システムとGPSで管理されている。営業の成績に加え、勤怠状態も良いので、お客様には感謝され、上司には評価されている。

最近は新入社員と一緒に営業に出るようにしているが、いろいろ手間がかかるので、スムーズに仕事が出来ないことが多い。勤務状態を監視されているので、自分の不手際だと思われたくないので、注意をするようにしている。

そんなある日、米国シリコンバレーの大企業に再就職ができるチャンスが回ってきた。セカンドライフは海外に住みたいと思っていた。自分なら業績も良いし、問題ないだろうと思い、はりきって応募をしてみた。

ところが、書類審査で不採用となった。不服なので問い合わせてみると、以下の回答だった:
残業が多すぎる=タイムマネージメントのスキルが少ない
自分の仕事ばかりで部下のサポート時間が少ない=人材育成の能力がない
部下からの多面評価の点数が低い=上司・人間性に問題がある


日本の企業では評価の対象である勤勉さや自分本位での業績の良さは、タイムマネージメントやチームワークを重視するアメリカの企業では評価がされないようだ。

良かれと思って蓄積してきたデータをアメリカ視点で見ると、誰も教えてくれなかった客観的・グローバルな視点での自分を知ることができた。気持ちを切り替えて、海外でも通用するようなセカンドライフを生きようと思う。

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遺伝子が知るワタシ

ノーコード開発に関する技術が進み、もともとは企画職だった矢島もシステム開発に携わるようになる。矢島自身もシステム開発業務に適性を感じたようで、プロダクトマネージャとして幸せに働いていた。
そんなある日、業務効率化DNA解析システムを、会社が導入。DNA検査の結果で、所属部署や勤務時間をパーソナライズする仕組みである。矢島は検査の結果、最適部署=システム開発、最適勤務時間=20:00-29:00となる。矢島は「勤務時間が明らかに理不尽だ!」と反発した。でも、上司からは「いや~、俺もそう思うんだけどさ…。君のDNAにとってはこれが最適なんだよ。この勤務時間変更は君のwellbeingのためなんだよ」となだめらるだけで、一向に解決策は見えない。
矢島はあきらめて、AIに指定された時間に勤務することにする。かなりきつい。「なんでこんな時間に…。なんで俺がこんな目に合わなきゃいけなんだよ…」。不満はありつつも、同じ時間を指定された仲間とも愚痴を言い合いながら何とかが頑張っていた。
そんな機関が2か月くらい経過すると、深夜に勤務することが苦じゃなくなってきた。むしろ、仕事がすいすい進む。「おお、この時間は俺にとってのゴールデンタイムなのかもしれない!すごいな、DNA!」。矢島の業績はどんどん上がっていき、成果が上がると共に、給料もあがったのである!!

……この政策は日本が、世界に先駆けて国家的に取り入れた政策である。DNAの分析結果に置いて、個人にパーソナライズされた最適の職業と勤務時間を割り振る仕組みである。
この仕組みのおかげで、日本のGDP、生産性はあがり、世界一になる。BCCやCNNでも取り上げられ、世界の最先端デジタル国家と言われるようになる。日本国民は、経済成長に大熱狂。バブル再来!
ただ、こんな働き方をずっとしていて、健康面、精神面の影響はでないのだろうか。その結末は、誰にもわからない。

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