2033年

shortshort23

いい上司 高本さん

 ある日、高本さんが会社に出社すると、上司から会社は、従業員のライフログやDNAから、個人の体質、知的能力、特性、性格などを分析し、最適な働き方を提案することを決定したという。高本さんは、この話を聞いて、驚愕した。
「これって、個人のプライバシーに関わることじゃないですか?」と高本さんが問いかけたところ、上司は、
「あなた方にとってもメリットがあるはずです。最適な働き方が分かれば、より効率的に仕事ができるようになりますし、健康管理にも役立ちます」
と説明した。さらに
「個人情報は秘匿されますし、複数の提案があるため、あくまで参考にしていただくものです」
と上司は答えた。

高本さんは、提案内容を確認すると、自分の体質、知的能力、特性、性格に合わせた最適な働き方が複数提示されていることを知った。彼女は、この新しいシステムに対して期待を抱いた。
「こんなに自分に合った働き方があるんですね。これなら、私もより効率的に仕事ができますし、健康にも気を配れます」
と高本さんは思った。しかし、部下たちは、提案内容に対して戸惑いを隠せなかった。
「どれも自分には合わない気がするんですが」と、部下たちは困惑した様子で尋ねた。高本さんは、部下たちに対して、
「これは参考にすべきものであり、必ずしも自分に合ったものとは限りません。自分で試してみて、自分に合った働き方を見つける事が大事だと思いますよ」
とアドバイスした。

会社の新しいシステムにより、個人のプライバシーが守られた上で、最適な働き方が提案されるようになった。高本さんは、このシステムを利用し、自分に合った働き方を探求することを決意した。

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shortshort17

いつのまにかデータハラスメントをしてしまう人たち

 矢島は、流通会社のシステム企画を提案している。商品をピックアップする人たちがより効率的に仕事が回るようにするため、脳波や瞳孔を分析し、一番良いタイミングで人員配置するものだ。

 どんなデータを取られても仕方ないだろう、だってレベルの低い人なのだから。それで生産性はあがるし、彼らだって、その分効率的に働けると嬉しいんじゃないかな。

 システム開発は佳境に。最近ではノーコード開発できるため、企画者の矢島も開発に駆り出された。慣れない矢島は大きなバグを連発してしまう。見かねた管理者から、脳波を測るよう勧められた。
「君は夜中が活性化しているようだね。この時間に開発するとバグがなくなると思うよ。やってみたら?だって仕方ないよね、レベルが低いのだから。これ以上バグがでたら君だって立場なくなると思うし。」と管理者からアドバイスされた。

 ハッとした矢島は、すぐに会社をやめデータハラスメントの専門知識と心のケア方法を学べる専門学校に通い始めた。

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