shortshort25
私が財務部門に異動してからずっと一緒の、社内外から評判の高い8年目社員の森下くん。その森下くんが、交際中の恋人から刺されたという衝撃的な便りが届いたのも束の間、結婚詐欺で捕まった。二重に驚いたが、驚く暇もない管理職。土曜日の午前中に、報道対策会議で徴集された。
彼は、複数の女性と「結婚を前提に」お付き合いをしており、それを知った恋人Aが恋人BのSNSを見つけ直接コンタクトをとったことがきっかけだ。当然彼女たちの矛先は当然自分たちの恋人である森下くんになり、逆上した恋人Bによる犯行だった。
信用評価データを管理する金融系企業で勤務している恋人Aが、彼のとある行動をきっかけに不信感が募り、不正に彼のデータにアクセスした。行動データや購買データから、他の恋人がいるのを想像するのは容易かった。
彼の普段の仕事ぶりからは、そんな姿は想像できなかったし、恋人Aを「一緒に協業できそう」と仕事で紹介してもらったこともあった。
彼が財務部門に異動した当時は、信用評価が人事にアセスメントデータとして正式に採用される前のことだった。採用後、一度部下全員のデータを見たことがあるが、過去にクレジットカード支払滞納をしていた為海外の審査が通りやすいカードしか使えないことも、プライベートのことだから、と気にしないようにした。
時々のリモートワークが、「母方の祖母の家」と言って寝屋川の位置情報が現在地になっていることがあったが、あれは本当だったのだろうか。
今回を機に、今後信用評価のアセスメントデータが採用担当や管理職でより重要視されることは明らかだ。
私は、いままで実績など数値データだけでなく、プロセスや人柄なども重視して評価してきた。森下くんも、仕事ぶりはもちろんだが臨機応変な対応の速さや体力、取引先への態度など人柄も踏まえて信用し、評価してきた。
これから一体、何を信じればいいのだろうか。
shortshort20
今日はリモート会議に参加する必要があり、戸田がパソコンを開けて、自分のネクタイを締めた。急にイライラが湧いてきた。彼は先日AIマネージャーに新たに提供された人格データを思い出した:
「戸田啓司:まじめで、細部を重視する指数━100%。遅刻しない指数━100%……」
AIマネージャーが就任した時、全ての人に個人データを求めたが、戸田は自分のデータを評価されたくなかったため、変更されているところが多い。AIマネージャーでも背後には誰かが操っていると思っていて、その覗かれた感じが本当に嫌い。しかし、今回、会社はAIシステムの導入で、AIが半分の事務を管理することはどうなるのか、みんなもずっと議論している。戸田もAIの管理は前と何か違いがあるのだろうか。ちょっと期待している感じさえある。
「より良い仕事状態のために、髪を整えてください。左の額から3本の髪が落ちています」
AIマネージャーの声が丁寧に届いた。戸田の思い出を断ち切った。
「あ、3本ですか」
戸田は少しショックを受けていた。事前ガイドブックを見なかったことを少し後悔し始めた。
「はい。ご協力ください」
AIの声は相変わらず優しい。細部重視の指数は画面に100%未達成の赤を表示している。
これは彼を急に緊張させた。戸田は額を手で軽く触った。
「じゃあ今は」
「よくできていますが、まだ2本あります…」
AIは笑顔の表情を送った。
額に汗が出たようで、戸田はまた触ってみたが、何も感じなかった…
この日の仕事がやっと終わった、戸田はこんなに疲れたことはないと思う。偽装された完璧な人格に疲れていると感じる。自分がAIに基準に達していないと言われた時、上司に言われるよりも気分が悪かったらしい。私はどうすればいいのか。戸田は長い間考え込んだ。
この時、先日同僚が話していた言葉が頭に浮かんだ
「私はAI管理のことについて全く知らないので、専門の授業に行くべきかな。」、「そうですね、うちの子の小学校にはAIに関する授業があるかもしれないそうです」……
「明日は専門の塾に行ってみよう!」
戸田は今日維持した髪をみだし、すぐに決めた。