#健康経営

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健康経営の健康

浜口の勤める会社は、福利厚生が充実していることで有名だ。特に「健康診断」を軸にした働きやすい環境づくりが積極的に行われており、診断結果を元にしたオリジナルの社食や人事サポートなど幅広い「健康経営」が実施されている。年に一度の医師による健康診断の他、週に一度のパルスサーベイもあるが、浜口は徐々に関心が薄れ毎回「普通」を選択していた。

データよりも直接のコミュニケーションが大事なのではないか。と自身の考えを持つ浜口はデータの記入を適当に行っていることを笑い話に部下とのコミュニケーションを計っていた。ある日、人事部に呼び出された浜口は管轄部署のパルスサーベイの平均化について相談される。内心「あの時の会話が影響してしまったか...」と反省しながらふと人事担当者のデスクを見ると、そこには健康診断の結果だけでなく、将来予測される病気や予測寿命、さらにはそれに紐づいているようにみえる人事評価のグラフが見えてしまった。

そこでハッと気がついた。稀に妙な時期に人事異動が発表され、その後退職するケースが数件あったことを。仕事の成果が得られない人事異動かと思っていたが、もしかしてこれらも健康診断結果に基づいた人事整理であったのでは...?

「健康診断」を元にした充実した福利厚生。そして「健康経営」。 低い数値を除外し、平均値を高めることが健康だとするならば...

翌日、浜口のヘルスサーベイは「最高」と記されていた。

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データの扱い方で会社選びをする人たち

 従業員の運動を義務化し、ボーナスUPや昇進などで「人参ぶら下げ」作戦を行っている。しかし、どうも体重や病歴に変化がなく、結果が伴っていないと感じる。今はエクササイズセッションをWebで受けてもらい、ログで利用状況をみているが、本当にみんな成果を出そうと思ってやっているか、わからない。

 最近、アプリをつかった健康サービスが進化し「運動をおこなったかどうか」や「良い食事をとったかどうか」をセンサーデバイスで測り、改ざんさせずにデータをトレードする仕組みができたらしい。これを会社でも導入するとどうだろう。確実に運動しているかがわかり、正確な情報をもとにしたプログラムだと、結果に結びつけられそう。データトレードも入れられると、社員の収入源にもなるし、会社も報酬を出さなくてよくなると思う。早速やってみよう!

 海野の会社は、この仕組みが話題となり「結果にコミットする健康経営」でTarzan誌に載った。健康スコアが上がる社員は昇進し、データトレードでお小遣いまで入る。しかも「海野の会社である」ことで健康上昇志向スコアがあがり、データが高くトレードされはじめた。

 80名だった社員は800名まで増え、健康経営を打ち出した経営戦略が大当たり。これにあやかるかのように海野の経営戦略を真似し始めた。

健康データを活用し、健康スコアがあがる人が昇進できる会社、
個人の健康データに全く関与しないことを宣言する会社
いまや就職探しの検索条件になっている。
 最近の学生は、健康データに全く関与しない会社を選ぶ傾向があるらしい。自分の親がそうした会社に転職しはじめていることも影響しているようだ。

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データなんて怖くない

海野社長の決断により様々なデータから社員スコアを図るシステムが2024年に導入されてから一年が経過した。従来から健康ポイントにより賞与加算が行わせていたが、データにより職員の働きぶりも評価され、給与や昇進にも反映される仕組みだ。
大津さんは、本システムの導入を喜び、日々の活動によりスコアが上昇し、社内でもトップレベルであることに誇りと喜びを感じていた。来年30になる大津さんは、高本部長から来年は課長に昇進する可能性が高いことを聴き、ますます業務を熱心にこなしていた。

30歳の誕生日を迎えたころ、チームリーダーになった大津さんは、半年にわたる大型案件の最終納品と次期案件の準備が重なり、多忙を極めていた。最終納品のあと複数の関係部署や取引先との打ち上げ会が続くと体調の不調を感じるようになった。気が付くと、体中にむくみを感じ、体重が急激に増加していることが分かった。異常を感じた大津さんは○○症候群と診断され1カ月の入院治療を行うことになった。
退院した大津さんは、勤務を再開したが、職場は長期入院した大津さんに気を遣うようになった。大津さんも、昔のように働くことに不安を覚えるようになっていった。気がつくと大津さんの社員スコアがかなりダウンしていることに気が付いた。

一年後、高本部長から、同僚の小川さんが課長に昇進するとの話を聞いた。小川さんは先輩ではあるが、内気で前は社員スコアも自分より低く、当然自分が先に昇進すると思っていた。確認してみると、現在は小川さんのほうが自分よりもスコアが高かった。
大津さんは、スコアの計算方法に疑問をもち、どのような基準でスコアを計算するのかを人事部門に尋ねたが、AIが計算しているとの話だけで納得のできる説明は得られなかった。
大津さんの社員スコアは、その後、徐々に低下していった。1年後、大津さんは社員スコアを導入していない会社に再就職をした。

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