taxonomy-author_category.php

ぼこ

shortshort17

いつのまにかデータハラスメントをしてしまう人たち

 矢島は、流通会社のシステム企画を提案している。商品をピックアップする人たちがより効率的に仕事が回るようにするため、脳波や瞳孔を分析し、一番良いタイミングで人員配置するものだ。

 どんなデータを取られても仕方ないだろう、だってレベルの低い人なのだから。それで生産性はあがるし、彼らだって、その分効率的に働けると嬉しいんじゃないかな。

 システム開発は佳境に。最近ではノーコード開発できるため、企画者の矢島も開発に駆り出された。慣れない矢島は大きなバグを連発してしまう。見かねた管理者から、脳波を測るよう勧められた。
「君は夜中が活性化しているようだね。この時間に開発するとバグがなくなると思うよ。やってみたら?だって仕方ないよね、レベルが低いのだから。これ以上バグがでたら君だって立場なくなると思うし。」と管理者からアドバイスされた。

 ハッとした矢島は、すぐに会社をやめデータハラスメントの専門知識と心のケア方法を学べる専門学校に通い始めた。

読む

shortshort16

データのお化粧を見破られないようにする人たち

 最近、メンタル不調から復帰したメンバーが入った。どうしても先入観をもってしまい、気を使ったり、仕事を振れなかったりする。
そんなこともあり、自分は先入観を持たれないようにしようと思っている。あぁ、今日もまた、気持ちとは裏腹に、元気に見えるよう、仕事も順調っぽくなるよう、パルスサーベイで晴れマークをつけてしまった。

 そんなある日、一通の通知書がきた。先日、心身の疲れからお腹が痛くなり、内科に通ったようだが、パルスサーベイの結果と違うからデータをお化粧せずに正しく報告せよ、という内容であった。次、もしお化粧すると、偽造罪になると書かれてある。急に怖くなった。

 本当は2人目の子育てのつらさや、仕事の苦労から精神的にも鬱々しており、病院に行った方がいいと思う。でも、だからといってパルスサーベイで正しく雨マークにつけたら仕事の不利にならないかと、心配になってしまう。

 このモヤモヤした気持ちをママ友に話したところ、偽造罪とAIに判別されないよう、うまいこと診断書を書いてくれる病院があるよと、紹介してくれた。つい先日、彼女もその病院に行ったらしい。私も行ってみようと思う。

読む

shortshort13

データの扱い方で会社選びをする人たち

 従業員の運動を義務化し、ボーナスUPや昇進などで「人参ぶら下げ」作戦を行っている。しかし、どうも体重や病歴に変化がなく、結果が伴っていないと感じる。今はエクササイズセッションをWebで受けてもらい、ログで利用状況をみているが、本当にみんな成果を出そうと思ってやっているか、わからない。

 最近、アプリをつかった健康サービスが進化し「運動をおこなったかどうか」や「良い食事をとったかどうか」をセンサーデバイスで測り、改ざんさせずにデータをトレードする仕組みができたらしい。これを会社でも導入するとどうだろう。確実に運動しているかがわかり、正確な情報をもとにしたプログラムだと、結果に結びつけられそう。データトレードも入れられると、社員の収入源にもなるし、会社も報酬を出さなくてよくなると思う。早速やってみよう!

 海野の会社は、この仕組みが話題となり「結果にコミットする健康経営」でTarzan誌に載った。健康スコアが上がる社員は昇進し、データトレードでお小遣いまで入る。しかも「海野の会社である」ことで健康上昇志向スコアがあがり、データが高くトレードされはじめた。

 80名だった社員は800名まで増え、健康経営を打ち出した経営戦略が大当たり。これにあやかるかのように海野の経営戦略を真似し始めた。

健康データを活用し、健康スコアがあがる人が昇進できる会社、
個人の健康データに全く関与しないことを宣言する会社
いまや就職探しの検索条件になっている。
 最近の学生は、健康データに全く関与しない会社を選ぶ傾向があるらしい。自分の親がそうした会社に転職しはじめていることも影響しているようだ。

読む